版画工房体験談その1

昨年、消しゴムハンコにはまり、だんだん彫るスピードが速くなるにつれ、複雑な版画をやりたくなりました。
最初に手を出したのが木版画。
小学生の頃、大抵の人が経験したあれです。
しかしながら、これは、彫り残したところが紙に写るという凸版なので、白い紙に黒い細い線をそう何本も綺麗に描き写せるわけではない…
もちろん、浮世絵の彫り師さんともなれば、一ミリに七本の髪が彫れる名人もいたというけど、現在の一流の彫り師さんでも五、六本が限界かな~とかいう世界。

私が表現したいのは、鳥の羽根の質感、動物の毛並みの質感。
じゃあ、最初から絵を描けよって話になりそうですが、絵は描いたそのまんまが作品になるけど、版画は摺ってみないと、何が出るか分からねぇというところが楽しい。
そんな私のワガママが叶う版画はないものだろうか…

版画の知識が浅い人に向けて簡単に説明すると、版画は大ざっぱに、凸版、凹版、平版、孔版の四種類。

木版画などの凸版は、版木に彫刻刀などで彫って凹凸をつけて、彫り残した部分(凸部)に顔料をのせて、上から摺り紙をのせ、こすりだす技法です。
銅版画などの凹版は、凸版とは対照的に、銅板の彫った溝(凹部)に顔料をねじ込んで、上からプレス機で圧力をかけて刷りだす技法です。
シルクスクリーンやステンシルなどの孔版は、基本的に、版に穴(孔)を作って、そこから下にインクを落とす技法です。

そして、お待たせしました!
私が体験した「リトグラフ」ですが、平版という技法は、上記三種類とは異なって、版に傷をつけません。
無傷で平らな版で、なぜ刷れるのか?というと、水と油の反発を利用するためです。
つまり、絵を描くノリで版画ができるということらしい。
でも、おっきな専用のプレス機で圧力をかけないといけません…

お~!!!
それは、試すしかないではありませんか!

そこで、行ってきました、版画工房の体験コース。
まずは、他人の作業を見学。
土曜日だったので、おじさまとかもせっせと銅板を彫っていらっしゃいました。
そのうち、私の視線は、リトグラフを体験中の若い女の子二人組にくぎ付け!
かわいい~(おいおい、そこかい!)

彼女たちの職業はデザイナー
日々、パソコンでデザインを仕上げているそうで、プリントアウトされたデザイン画は、つるつるの紙に平淡な色で浮かび上がるだけ。
だから、身体を動かして、刷り上げることが本当に楽しいらしい。
確かに、作品の色を重ねた部分は、盛り上がりもあれば、意外な色彩効果がある。

しかし、個人的に難点なのは、オイル系のインクを落としたりするのに、ガソリンとか使うので、工房は換気をしていても、苦手なニオイが漂う…
デザイナーのお嬢さんは、普段はペン画などを描いているせいか、油性インクを扱うのに余り慣れていないらしく、手がインクで真っ赤…
それを落とそうといろいろやったもんだから、余計に血みどろ…(^^;
「ガソリン臭を振りまきながら、電車乗って、手が真っ赤って、ヤバいよ~」と笑いまくり。
もちろん、後で工房のお兄さんに、落としてもらって、だいぶ綺麗に落ちましたけどね。
ううむ…私も不器用だけど、お譲ちゃん、あんなに綺麗なデザイン画が描けるほど器用なのに、インクを盛りながら、なんであんなに手が汚れちゃうのか、すっごく不思議ですけど。

お嬢さん方の体験を見学した後は、お金払って、自分の体験スタート。
アルミ板に油性系のペンで描画するのですが、クレヨンみたいな描き心地。
それから解墨を使うと、水墨画のようなタッチで絵が描けますが、この濃淡、刷った時にどこまで出てくれるんでしょうねぇ…

「版画は、イラストとか油絵とかと違って、上手く描けなくても、刷り上がった時に、なんとなく味が出るから、気楽に描いちゃって~」とお兄さんに励まされ、インコの絵を描いてみたものの…
二つの版を使って、二色刷りをやるのですが、どう重なって、どういう効果がでるのかさっぱり分からんので、本当にデタラメ描いてしまいました。
わ~ん、もっと丁寧に下描きを描いてこればよかった~

ちなみにリトグラフで使う版は、昔は石灰石を使ったそうですが、重いし高価だから、今時、あまり使われません。
ヨーロッパでは、かつて、この方法で楽譜を刷っていたらしいですね。
わはは、試しに、三味線譜をリトグラフで刷ってみればよかったかな~
よく使われる版が、アルミだそうです。
全部で四回で終了する体験ですが、どうなることやら…

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