伝統芸能の未来は?

梁祝
また、関係者の先生からチケットを頂き(^-^)、京劇舞台を聴きに行ってきました。
「京劇なんて、何言ってるか分からないからツマンナイ」なんて言ってたのは、どこの誰よ(笑)ど素人の外国人の私が聴いても感動した!
いえ、別に役者や伴奏者、演出関係者が大学の現役の先生達だから、ヨイショしてるわけじゃないですよ(笑)
結局のところ、主役を演じた張火丁先生が現役の人気京劇役者で、歌が上手いっていうのが最大の魅力なんですよね。
うまく言えないけど、歌い方がドラマチックな気がする(*^o^*)

気になるオケの構成ですが、
普通、昔ながらの舞台だと伴奏者はお客さんに見えない舞台右脇にいるものですし、最近の大型オペラ仕立てですと、ヨーロッパのオペラと同じで床下に入ってしまうものですが…今回は舞台右脇にいるのに、一部の奏者がお客様から丸見え。
で、誰が見えてたのかっていうと、京胡、二胡、三弦奏者の三人。
三弦の馬忠昆先生、京劇三弦というDVD付き教則本を出版してますから、お顔を知ってる人もいると思いますが、カッコいい爺さんですよね〜。
残りの奏者は幕に隠れて見えないけど、月琴、打楽器などの方々がいたと思われます。
ビオラやチェロ、コントラバス、琵琶、笛、箏、笙、阮なんていう方々も、歌の伴奏はしないけど、背景音楽担当としてオケに入っています。

演目は「梁山伯と祝英台」。
ハイ、よく知られた定番ですね。
日本の宝塚でも舞台を平安時代に設定して上演してるくらい有名な中国の民間伝承ですから、大抵の人はご存知かと思いますが、念のためにストーリーをおさらい。

お嬢様の祝英台が男装して都に遊学に出た途中、梁山伯という青年に出会う。
ともに学ぶこと三年、仲良しの二人だけど、英台が女の身であることは秘密。
でも、何となくお互いに恋心を抱いてて、二人とも思い悩んでる。
その後、英台が里に帰る。
梁山伯が会いにいくと英台は馬文才との結婚が決まっていた。
梁山伯は叶わぬ恋を引きずって病死。
英台が嫁ぐとき、梁山伯の墓を通りかかると急に大風が吹く。
英台が墓の前に行くと墓が開き、その穴に身を投げると二匹の蝶(二人の化身)が出てきてひらひらと飛んでいった。
終わり。

演出的にビックリしたのは、やっぱり梁山伯が病死するシーンでしょうね。
英台に許嫁がいると判明後、急に場面が変わって病の床に就く梁山伯。
「英台、英台…」と叫んだかと思ったら、そのまま、バタって死んじゃった。
ええっ、1分も経ってないよ(^^;;
普通、オペラでも歌舞伎でも、死にそうな人って、苦しみながら一曲歌ったり、踊ったりしない?
で、皆して「まだ死なないね」ってイライラするのが定番なのに、この演出は「太快了吧(早すぎだろ!)」と呟く人続出。

でもね、ここを端折ったのも分かるのよ。
だって、ここは適当に済ませて、次の場面、梁山伯の墓の前で、祝英台扮する大スターの張先生にたっぷり歌ってもらいましょうってことなのよ。

たっぷり歌っていただいた後はラスト!
ラストは歌ではなく舞がメイン。
ドライアイスもくもくで、舞台がこの世らしからぬ世界を表現。
大勢の蝶に扮したお姉さんたちがヒラヒラ舞った後は、バックの白い幕が切って落ちて、蝶になった梁山伯と祝英台の登場。
二人で手に手を取って舞ってお終い。

カーテンコールは、お客さん大喜びで総立ち!
みんな、夜も遅いのに、なかなか帰らないから、役者さんは何度も舞台に出てきてご挨拶。

すごいなぁ〜
ある関係者の先生が講義で興味深いこと言ってました。
「伝統芸能って、現代人にとっては面白くない、所詮今の人達に昔のものはわからないと思い込んでて、この何十年も新しいものを創ろうと努力してきたけど、ちょっと方向違いだったんだなぁと最近思うんだよね。数字的に見ても、売れる演目って本当に昔からある演目なのよ。皆がよく知ってるやつ。で、演技や歌が昔の名人にも劣らないものを見せることで、お客さんはちゃんとついてくるんだよね。もちろん、年寄りだけじゃなくて、京劇なんて身近じゃなかった若い子達も、もっと知りたいと興味を持ってくれる。だから、なんだかんだ言って、客の勉強不足を恨むとか、演出家のアイディア不足を問う前に、役者が昔の人に劣らぬ技術を身につけないとね。古いとか新しいとか関係なく、いいもんはいいのよ」

耳があいたた…
京劇役者に限らず、舞台下の10年の練習は舞台上の1分って言いますものね。

二胡LESSON114,115,116

あはは、レッスンをサボっていたわけではありません。
書くのを忘れていたわけでもありません。
何と言うか、メンタルな話なので、書けないというだけです。
いや〜書いてもいいけど、自分で自分のイメージ悪くするのもバカですし、何よりも読む人が気分を害するかもしれないし、或いは、鬱な気分の伝染ということもあり得るので控えます。

一回通しで私が春詩を弾いて、後の30分以上は話してました。
あ、別に遊んでたとか、その場で練習したんじゃないですよ。
これだけ見ると、人によっては、「お前の練習不足で、先生も教えようがなかったんだろ」とか「先生は何も教えてくれないのに、レッスン料払ってるの、バカじゃない?」って思う人もいるかもですけど、そうじゃなくて、私の演奏に「音楽らしさ」がこれっぽっちもないのは、もう技術の問題ではなくて、メンタルの問題が大きいということです。

私、弾いてる時は、どんなに単純で簡単な曲や暗譜している曲だったとしても、ずーっと音程とリズムがあってるかどうかばかり気にして弾いてますからね。
それで、きちんと弾けているならまだしも、ほとんど弾けてませんから、たった5分の間に何十回も心の中でダメ出しすることになります。
でも、音楽は時間芸術ですから、途中でマズイと思っても、本番(一応、先生の前で通す時は本番です)は止まるわけにはいきません。
だから、弾いてる本人は、楽しいわけないわな。
苦痛で苦痛でしょうがない。理想と現実が違いすぎるから。
それが全部顔に出る、手に出る、オーラとなって渦巻いている…。
私の基準はかなり高すぎるのです…。
しょうがないですよね、年取り過ぎてから、音楽やってるんだもん。
手と頭は子供のように働かないくせに、音楽をどれだけか聞いてきたという経験値だけはやたら高いんですよ。

だから正直に言えば、自分に対してだけでなく、人に対しても厳しいと思います。
自分ができないので、他人のことをとやかく言えないから書かないだけです。
特にお金払ってるプロのライブは、自分がその人のファンでない場合、今、自分は奏者の粗探ししてるなと思うことがあります…
ああは弾きたくないとか、あ、音外したなぁ、あ、うまいこと誤魔化しやがったなとか…。
嫌な性格ですね。

【余談】
連休中で、先生もいろいろお忙しい様子。
今日は昼の12時という変な時間の約束でした。
約束の10分前に行ったら、先生、まだ昼ご飯中だった(^^;;
この後も予定がいろいろ入っているので、ゴメン、先に食べさせてねって(笑)
個人レッスンでお宅に伺う場合って、先生のお家のつくりや性格にもよるけど、生活空間と区切りがないお部屋でレッスンすることあるのよね。
ちなみに三弦の先生のお家もよく晩御飯のおかずの匂いします…。
先生が食べ終わるまで、一人でウォーミングアップして、じゃれてくる丸子(ワンコちゃん)に音階を聞いていただきました(^-^)

弦舞藝幻

gaoyizhen
中央音大の高藝真さんの修士卒業音楽会に行ってきました。
この方は子供の頃は琵琶を弾いてただけあって、手先がとても器用なんですよね。
名前から見て、きっと親は芸術関係の仕事してるんだろうなぁ。
終わってから、私と先輩は「よかった〜」と繰り返しつぶやいちゃいました。
本当に無駄な動きがなくて美しいフォーム、だから音も美しいのですね。
ついでに本人も美しいし…でも中国人学生って、普段はスッピンでシンプルな服装でメガネとかかけて講義に出てたりするから、美人だと気づかないケースもあったりして。(おさげに三つ編みメガネの学級院長が、ドレスアップしたら凄かったっていう少女漫画の王道みたいな女子が中国の音大にはたまにいる気が…)

一、竹溪辞 作曲:孫小松
三弦、二胡、琵琶の三重奏です。
一段、二段は、茶館とかのBGMみたいで、邪魔にならないいい雰囲気の曲です。
三段目はちょっとアレグロで、琵琶と三弦の滑音が聞きどころ。

二、風雨鉄馬 作曲:白鳳岩
これは、三弦やってる人なら、知らない人はいない名曲。「三弦聖手」と呼ばれた芸人の白鳳岩の作曲で20世紀の作品です。白先生は琵琶や四胡もできる人で(昔の芸人さんは往々にして二、三の楽器ができますが…)、三弦の伝統的なポジション移動を見直し、奏法とかに現代的要素をどんどん取り入れ、三弦の独奏作品を残しました。

三、舞幻 作曲:徐暁林
作曲者がチベット族の舞曲を素材に作曲しただけあって、テンポのいい曲です。

四、草原(第一楽章)作曲:顧冠仁
五、三弦与楽隊協奏曲 (第一楽章) 作曲:楊勇

四は三弦協奏曲として、2006年にシンガポールの楽団のために作曲されたものです。
数日前、彼女の先生から演奏曲目聞いた時に、「じゃあ、オケをバックに弾くの?」って聞いたら、「そんなわけないでしょ、オケを雇ったらいくらかかると思ってんのよ、ピアノ伴奏だけよ〜」って言われちゃいました。シビアですね。

【余談】
実は、中国三弦という楽器は非常にマイナーな楽器なので、子供の頃からこれ一筋っていう人はあまりいません(笑)
様々な理由で別の楽器から三弦専攻に転向する人と、様々な理由で三弦から別の楽器に転向する人も多いからです…。
子供の頃からこれ一筋だったら、もっと上手くなれるのかというとそうでもないんですよ。
というのも、この楽器、もとは津軽三味線なんかと同じで、唄の伴奏楽器だったのですが、独奏楽器として別ジャンルが確立しているので、昔の芸人さんの弾き方では、とてもじゃないけど、弾きこなせないんです。
琵琶の奏法とかも取り入れたり、両手五本の指全部使いますし…。
だから、家族に芸人がいたとして、芸人の爺さんから基礎習ったとかじゃ、役に立たないんです。
弾き方が全く違うから。
かといって、民族楽器独奏というジャンルの三弦をきちんと教えられる人の数は極めて少ないので、多くの人は、最初、数年適当に習って、途中で壁にぶち当たって、自分の弾き方を変えざるを得なくなります。
逆にこれやってる人が、唄の伴奏できるかっていうと、全くできませんよ。
譜面的には簡単だから技術的に手は回るだろうけど、唄の拍の取り方が西洋音楽とは違うので、唄い手にしてみたら、「このボケ、どういう間の取り方するねん」と切れることでしょう(笑)

三弦って技術的にちゃんと弾くには、他の楽器同様、何年もかかるし、その割りに仕事がないので、実に割に合わない楽器なんですよね。
ところで、三弦の先生は、三弦が一番難しいと言い、琵琶の先生は琵琶が一番難しいといい、二胡の先生は二胡が一番難しいって言いますね(笑)
だから、ちゃんと弾こうと思えば、どれもそれなりに難しいのは確か。

でも、二胡とかだと、技術的にちゃんと弾けない人でも、素人相手なら聞かせられるというところがありますからね。
だから、趣味で弾く人が多いのも、わかります。
さほど、技術的に高いものが要求されなくても、素人受けするテンポのいい曲や感じのいい曲があって、そういう曲は、ちゃんと弾けてなくても、素人目にはバレないというか、テンポがよかったり雰囲気がよかったりするので、ごまかせるというか、別に皆が楽しければ、多少、技術的に下手でも誰も苦にならないという意味です。
三弦ってそういう、受けのいい名曲ないもん…
今日のお客さんの大半は関係者だと思うけど、隣のオジサン寝てるし…

私も三弦が好きで好きでたまらなくて、子供の頃から習った人間ではありませんが、関わった以上、「ド素人で不器用な人でも、この程度の曲なら、この程度の時間で弾けるようになるんだよ」「ど素人でも、だいたい、ここまでならできる」ということを実証するために、練習し続けているようなわけです。
こんな私でも弾ける、耳あたりのいい曲って何かないのかなぁ。

…さて業界の愚痴はこのへんで終わり(^^;;