芸名の不思議

喜多郎(きたろう、1953年2月4日 – )さんといえば、日本のキーボーディスト、作曲家ですね。
代表作「絲綢之路(シルクロード)」とか、私もCDを3枚持ってます。

先日、舞台演出科(演出家ではなく、うちの大学のそういうことを勉強する学科なんですよ)の先生に、「喜多郎さんって、『喜』が名字で、『多郎』が名前なのか?」と聞かれ、思わず笑ってしまいました…

確かに「喜」という字は、中国人のよくある名字だから、勘違いするのも無理はない…
「三文字すべてが名前で、姓のない芸名なんだよ」と教えてあげたら、ますます驚いていました。
でも、「例えば、バイオリンの五嶋みどりさんがMIDORIにしたとか、日本人(特に女性)は名字が変わりやすいから、名前だけの芸名って結構あるよ」と付けたしたら、ますます、「ええ~~~!!!姓が変わるの?」と驚かれてしまった。

確かに、スパイもののドラマとか見ていると、中国人は潜伏する際に名前を変えても、姓まで変えることは無いみたい。
自分の家系、一族の誇りみたいなものを重んじるんだろうか…

今だって、結婚したら、法律上、どちらかが姓を変える必要がある国なんて、日本ぐらいなものだろう…
(外国人と結婚すれば、法律上、姓を変える必要はないです。変えてもいいですけど…)
でも、家督制度とかあった時代、女性は嫁ぎ先で男の子が生まれるまで、籍を入れてもらえなかったとかあって、嫁ぎ先の姓を名乗れるって言うのは、むしろ、女性の地位、名誉みたいな時代もあったわけで…

そういえば、姓ごとまるまる名前が変わるパターンで、一門が同じ姓を名乗るというのもあるよね。
例えば、津軽三味線の場合、大合奏か何かのイベントの控室で、うっかり「小山先生いらっしゃいますか?」と訊ねたら、大半が小山先生だったりするわけで…(笑)
誰をさがしてるんだか分からん(^^;
そもそも、姓は変えずに、名前だけお師匠様から一文字頂いて、付けるっているのもありなので(琵琶とか、そういう流派あったような気が…)、う~ん、一門が同じ名字って言うのは、感覚的に芸事の上で、お師匠様と養子縁組をしているようなものなんでしょうか???
考えてみたら、昔は、年齢に関係なく、入門の順に、兄さんとか姉さんとか呼んでるんだよね?
(中国人は名前変わらないけど、今でも、学問や芸事の先輩を、普通に師兄、師姐と呼び、後輩を師弟、師妹と呼びます)

これも教えてあげたら、ほ~ぉ、と言われた。
中国だって、役者さんなどが特定の名前を継ぐことはあるけど、大勢の人間が同じ姓って言うのはあまりないかも…

琵琶は何故「琵琶」で、三弦は「三弦」と呼ぶのか

先日、二胡専攻の友人が言いました。
「この間、二胡って何本弦があるの?って聞かれちゃった…二本に決まってるじゃない、二本じゃなかったら「二」胡じゃないでしょうが!」

ははは、確かに。
四本なら四胡だしなぁ。
弦が一本の、独弦琴という楽器もあったなぁ。
日本のお琴(筝)なんかも、十三絃とか、十七絃とかいうふうに、弦の本数が楽器名として通用するしなぁ。

ん?
まてよ、三弦って、弦が三本だから当然、「三」弦なんだけど、弦が四本の三弦ってあるよ。
これほんと。
中央音大の王振先先生が、1964年に「四弦三弦」というのを制作している…調弦はEADG。
1976年にも調弦GCDGの四弦三弦を作って、自分で演奏したCDも録音してるしなぁ。

まぁ、音域広げたい、琵琶の演奏技法取り入れたいって気持ち分からなくもないけど、三弦は弦が三本でいいんじゃない???

じゃあ、琵琶は四本の弦だけど、四弦って呼ぶんかいなと思いきや、そんな習慣はない。

実は、昔、ほとんどの弾撥楽器は、「琵琶」と呼ばれていたらしい。
というのも、そもそも、何で「琵琶」という楽器は「琵琶」って言う名前なのかというと
昔々、「琵」(発音はPi)というのが、弦を右手で前方へじゃらん~と掻き鳴らす動作で、「琶」(発音はPa)がその反対で、後方へじゃら~んと掻き鳴らす動作を表しました。
だから、こうやって弾く楽器はすべて、琵琶と呼んでいたのだそうな。

現在の、「月琴」(一昔前の日本でも流行したらしいね。坂本龍馬の奥さんのおりょうさんも弾いていたらしい。中国では今も京劇伴奏等に使います。)、「阮」(正倉院の宝物として螺鈿琵琶が有名だけど、実は螺鈿阮というのもちゃんと日本に伝わっています。)等はすべて琵琶の仲間~

ん?じゃ、まさか、弦楽器であって、弾くという点で琵琶も三弦も同じだから、もしかして、三弦まで琵琶って呼ばれていたのか?
ええ?!と思いきや、三弦にはそういう説や噂は見当たらない…
三弦の前身といわれる楽器の名称が「弦鼗」。発音記号はxian tao 。
(秦の始皇帝の頃…紀元前214年以降?)
「鼗」← この漢字、文字化けするかなぁ…(鞉·鞀)とも書くらしく、意味は「でんでん太鼓」。
三弦は、弦の付いたでんでん太鼓ってことで、琵琶じゃなかったんだ(笑)

いい音って、結局のところどういう音なんだろうね

私の好きな民謡に「虎じょさま」というのがあります。
何故、好きかといいますと、出だしの三味線の不協和音がぞくっとするから(笑)

確かに、ピアノで不協和音を弾けば、すごくイヤな感じがします。
だから「不協」和音なのかな~
十二平均律だから嫌な感じなのかと思いきや、私の中国三弦で弾いてみても、やっぱりただの不協和音だなぁという気がするんですよね。
中国三弦と三味線の違い、細かいとこを抜きにすれば、やっぱり「さわり」のせいかと思います。
弦が棹に触れることによって生ずるブーンという音、西洋人にとってはノイズですね。
二胡も倍音というかノイズの多い楽器ですが、そのせいか、日本人はこの音がすごく好きな人多いですよね。
職人さん曰く、ノイズを徹底的に失くしてゆくと、今度はバイオリンっぽく鳴ってしまって、味わいが減ってしまいます。

そういえば、三弦を始めたころ、姉弟子がフォームを変えたから、どうも力加減が分からなくなってしまって、自分の音もよく分からないから聴いていてくれと言われたことがありました。
「こっちの音とこっちの音、どちらがいい音?」と聞かれて悩みました。
だって「いい音」の定義が分かんないんだもん。
つーか、音の好みって国民性あるんだよね。
実は、たま~に私が好きな音と、こうあるべき音が一致しているかどうか自信ないです。

だから、最初に、その国のその分野ですごく上手いと言われている人の演奏を浴びるほど聴いて、「これが基準」って分かってないと、比べようがないというか…
骨董屋の奉公人も、よい品物、本物を見ることによって真贋鑑定の眼が養われると言いますよね。

でも、不思議なことに、数値的には上手い音が出ている(音程やリズム、強弱が割ときちんと合っている)人でも、全然、人を感動させてくれない場合っていうのも実際存在するわけで(現に私は必ずしも一流演奏家と言われる人の演奏を聴いて感動するわけではない)、一体、これはどうしたことか。

かと思えば、練習場所に困って、外で、でたらめ弾いていた私のお稽古の音に「何か感じるものがある~」と言った人もいたっけ。
ただのナンパかもしれないが…(^^;)

人間の感動のメカニズムを知りたいものです~