「慣れ」だけでは脱力できない私

今、三弦で、腕の重量だけを利用して弾くことを練習しています。
具体的には、トレモロ弾く時に、力の源はすべて腕の重量だけ、その運動の開始と方向は指先が主導して、手首と腕は、指先につられて動くのみで、主導して動くなということをやっています。
上手くできると、本当に速く動くし、身体の何処も傷めないので、便利ですが、その技術を安定させることができません。
だってさ、身体を動かそうと思うと、指先以外、特に手首に力入っちゃうんだよね…
だって、神経の一番先っぽだけに力が残ってて、後は力を抜くなんて、そんな器用なこと、不器用な人間にはむずかしすぎ~。
ただ、先天的に器用な人や、訓練してきた人は、いとも簡単に部分的に脱力できるのですよね。
確か、藝大出身の人が何かに書いてたけど、指、手、手首、腕と順番にだんだん力を抜いていくような体操があるんだとかないんだとか。
誰でも、楽器を初めて間もない頃と言えば、力入っちゃうと思うのですが、だんだん抜けてくるものですよね…
大多数の先生は、それは「慣れ」とおっしゃると思いますが、確かに凡人でも大多数の人は慣れで何とかなるのでしょうが、私は最近、それじゃ、永久に上手く力が抜けるようにはならないマイノリティな人々が存在すると思ってます。

例を挙げれば、子供の頃によく転んだ、運動音痴だった、姿勢がかなり悪かった、目をつぶると自分の身体の位置が分かりづらい、目をつぶって片足立ちが10秒も持たないような平衡感覚の悪い人…
そういう傾向のある人は、多分、楽器弾く以前に、姿勢を保つだけのために、おかしなところに力入れる癖が、子供の頃から知らない間についちゃってるんですよ(汗)
だから、まぁ、私みたいなマイノリティな人は、大多数の人と同じように、慣れたらそのうちよくなるなんて、思わない方がいいんじゃないかと思うのでした。

私は子供の頃、一時間の授業中に姿勢を保っていられなかった…いつも机に突っ伏して寝ちゃうとかして怒られてた。
字を書く時にやたら目を近付けるので、先生は私の視力を疑ったけど、実は視力の問題じゃなくて、姿勢保っていられなかっただけという…
背が高いせいだろうとか、部活動大変なんじゃないかとか、当時はいろいろ理由が付けられたけど、大人になってから実際はそれだけじゃなかったんだろうと分かったんですが…(笑)
まぁ、私の原因は深く突っ込まないでください。
私が知ってるのは、身体疾患、精神疾患など様々な理由によって、こういう症状を出す人が少なからずいるらしく、理由は人によりけりです。

そういう身体の機能的な問題のほか、人前だとものすごく固まるタイプの人も、自宅で練習している時以外は、先生の前でのレッスンも含めて力を抜きようがないですよね。
私にもその傾向があります。
小・中学生ころまでは、私も思ったことを普通に言って、のびのび生きていましたが、大人の世界は、そういうわけにはいかない。
「男は敷居を跨げば七人の敵あり」と言いますが、別に男性じゃなくても、そう思いますよね(笑)
社会では、外バージョンで生きないといけない。
本当の自分の考え方がいつも世間大多数の人の考え方に一致するので、そもそも、外バージョンを演ずるシーンが少ない人は、ラッキーな人(!?)。
ほどほどに、本当の自分と外バージョンを両立させられるのが大多数の人。
外バージョンを演じなくてもいいのは、そうとう才能のある変人。
中途半端にしか外バージョンを演じられない人はトラブル続き~
本当は変人だけど、外バージョンを演じることに納得がいかない人は引きこもらざるを得ない。
何とも、辛いですな。
こういうのは、技術の問題ではなく、心の問題、ひいては生き方の問題なので、調子悪い時は弾かない方がいいかもしれない。
弾く前に、生き辛さを解消する方法を身につけるべくカウンセリングへ行くべきかも。

えっと…
そういう「慣れたらそのうち、なんとかなりそう」にもないマイノリティな私ですが、とりあえず、いい先生に出会えて、自分がいかに余分な力を無意識に入れてたかということが分かりました。
天才と呼ばれた人の対極で努力して頑張ってきた人、身体を痛めたけど復活したような人は、身体の使い方そのものを研究しておられるような気がします。
大多数の人が普通に「慣れ」で身につけてしまうことを、ある程度、言語化してくれます。
もっとも、言語化したものをすぐに自分のものにできるなら、世の中、先生は要らないというかビデオ教材や、先生のブログ読めば済んじゃいますよね。
だから、レッスン料払って叱られに行くわけです(^^;

あと、同性だと気兼ねなく、「先生の手、触っていい?」って言えますが、異性だとそうもいかないかな。
…っていうか、あんまり私が言われた通りにできないと、私の先生は日本人男性である三味線の先生を除き、ほとんどの方が、私の手を触ってみろといいましたけど、普通はそうはいかないんですよね。
盲人のレッスンじゃあるまいし…
私も自分が先生の立場だったら、中学生以上の男性に触ってみろとは言えないわな…

自分がいかに無駄な力を使っていたのか分かっても、それを意識して抜けるかどうかは別問題…
多分、私はまともに三弦を弾けるようにはならないかもしれない…
あと40年生きられるとしたって、老化していくだけだしなぁ。
でも、おかげさまで、二胡のような物質的に軽い楽器を弾くときに、以前よりは楽に弾けるようになりました。
才能ある方は「慣れ」なんておっしゃいますが、身体的、心理的なハンデのある方は、自分の力の無駄遣いを「意識」した方がいいと私は思います。

ヒヨコ頭でも楽器は弾ける

実は、私は脳がどんくさいので、自分の身体の見えない部分の使い方が分からないです。
分かりやすく例を挙げると、目をつぶると自分の手先がどこにあるのか、どういう動きをしたのか分かりづらいということ^^;
自分の身体見取図が不正確(というか不完全?)で、自分と他人(と言っても、全ての他人ではなく自分にとって重要な人)との身体の境界が不鮮明な時があります。
加えて、感覚が過敏なところと鈍いところの差がありすぎます。

夫が机の角に足ぶつけると、自分が「痛っ」と叫んでしまう…
そのくせ、知らないうちに怪我して血を流していても気づかなかったりして、後で、こんなところにカサブタが…と思ったり。
でも、ひどく怪我すりゃ、痛って分かりますよ^^;
歯磨き、特に歯間ブラシは鏡見ながらでないとできない。
逆立ちできないし…かと言って、根本的な腕力が不足しているわけじゃないです。
自分の足先や背中をどうもっていけばいいのか本当に分からないというか、怖いです。
泳げないし…とはいうものの、顔を上げて目を開けたままなら、平泳ぎで50mくらいなら、ノロノロと泳げます。
ちなみには母は、本当にカナヅチで、普通に力抜けば人間って浮くはずなのに、沈んでいきます…力入れすぎてるんだろうねぇ。

こういう人はマイノリティですが、確実に社会に多少なりともいらっしゃいます。他人に信じてもらえないので、さらけ出す勇気がなく、黙っておられるだけかと…運動機能そのものがかなり劣っているわけじゃないので、他人には理解し難いのかも。
あ、別に心配してお医者さん紹介してくれなくてもいいです。
原因おおよそ知ってますから。
決して、やる気ないとか、ふざけてるとか、反抗してるわけじゃないのです。
単にわかんないんですよぉ〜〜〜

そういう人もいるんだという前提で、楽器の練習のお話を続けます。

三弦の弾き方を根本的に変えました。
あまりにも前の方法と違いすぎるので、修正が大変。
厳しい先生だと、どうして言われた通りにできないのかと叱られちゃいます。
だって、言ってる意味と、どうやったら、そのように身体が動くかは別物なので、自分の身体の動かし方がわかりません。
比喩ではなく本当に…。例え日本語で言われても同じですが、多くの先生は私の中国語コミュニケーションのせいと良い方向へ勘違いしてくれて、手を出してくれるので助かります。言葉の字面的な意味は翻訳できるほど、実は承知しています。

聞いて分からないのなら、先生を模倣すればいいじゃん。
その通りですね。
で、模倣しようとすると、本当に見えた通りに自分もやっているかどうかっていうのは、じぃ〜っと自分の手先を見ないと分からないのです。
だから、どうやら、どの先生も不思議に思うようです。
どうして、穴が空くほど、他人や自分のやってることを見つめるのかが…。
普通、音の場所がわからなくて、三味線とかだと棹を見る、ピアノなら鍵盤を見る人は多いと思いますが、そうじゃなくて、私はただ弾けばいいだけの先生や自分の手そのものを見るんですね。
だって、言われた方向に弾いているのか、本当に見ないと分からないんだもん。

それと、楽譜見ろって言われると、じぃ〜と楽譜を見続ける必要があるので、他の感覚がいっきに麻痺して、今、何してるのかが分かりません。
例えば、車の運転なんかさせた日には、目に映るもの全てに集中するので、情報処理と身体制御が困難で、ぐったりと疲れます。
車から降りて、貧血おこしてクラっときて以来、別に好きで免許とったわけじゃないのでペーパードライバーです。

じゃあ、あんた、子供の頃から、どうやって、楽器弾いてきたの?
…って思いますよね^^;
楽譜は基本暗譜、いつも間違いそうになる箇所だけ、譜面のあそこに書いてあったと場所を記憶していて、本当に忘れそうになったら、そこだけパッと見る、そういうことです。
暗譜そのものは、音源でメロディとリズムを覚えています。

初めての行為、慣れない行為は、ずっと見てないといけない…。
関係ないかもしれないけど、電子レンジもよく見つめるらしい。
セットすれば勝手に出来上がるのに、ずっと前で待ってしまうのは何故だろう?
流石に洗濯機は見つめない…それは中が回っているのが見えないから、面白くないせいかと…^^;

で、先日、先生がおっしゃいました。
「いい音がしたら、見てなくても動作は正しいはずだから音色で聴き分けなさい」

なるほど、一理あるなぁ。
音色と自分の行為の関連性なら、私のヒヨコ頭でも覚えていられたわ。

でもね、「いい音」という概念は実はくせ者。
それは、その文化圏の中で良しとされている音なので、自分の思ういい音と全然違うのよね。
もちろん、自分の好きな音とその業界で言われてるいい音がほぼ完全に一致する場合もあります。
私の場合は三味線の師匠の音がそれで、だからお稽古代心配した師匠に、弟子を紹介しようかと言われた時に、師匠じゃなきゃやだ〜と断りました。

この際だから、ついでに言うと、子供の時に、協和音とか不協和音とか、メジャーとかマイナーとか、寂しい感じでしょとか、先生は勝手にいろいろ概念を押し付けるけど、私にはそう聴こえないんだが…と思うこともあったなぁ。
だってさぁ、増四度とか、欧米では悪魔の音とかって嫌がられるんだって?
私的にはめっちゃ、怪しくていい感じよ。
どういう風に聞こえるかを、音を聴かないうちから、同意を求めないでほしいわ。

だから、三弦の場合、「ほら、今の音、いい音したでしょ」って言われると、そうか、これが目指す音なのね、と記憶するようにしています。
本当は自分的にはそれが理想の音でなくとも。
三弦の目指すべき音はいい音っていうより、私的には中国の路地の匂いプンプンで、ちょっとキツイ感じなのよね。

そういえば、実際、名人と呼ばれる人の中にも、どうしたら、そんなフォームとそんな姿勢で長時間、弾いていられるの?という人がいらっしゃる(私がそう思うのではなく、今まで交流してきた全ての先生が口にしたセリフ)。
だから、王道というのはあるのだろうけど、一ミリの差もなく先生と同じように動かせるわけもないのだから、そこは無視していいのか…
という結論に落ち着きました。

もしかして、私のようなマイノリティ以外の人は皆、普通に当たり前にそうしてきたのか?
ははは…先生方、世の中にはこういう人もいるのよっていう参考にしてくださいm(_ _)m

音程と振動による感覚

三下りの調弦が分からない…
もちろん、GCF ADG BEAのように、それぞれの弦の間が4度の音程を取ればいいと、頭では分かってます。
以下、感覚の話です。

私の場合、中国三弦が一般的にGDG(三味線で言うところの二上り)で調弦するので、これが私にとってのスタンダードなのです。
そんな訳で、私の中では、三味線の本調子は、「二下がり」で、三味線の三下りは「一下がり」なんですよね。

私は十代の頃、ほんの少しだけバイオリンを習ったことがあるのですが、あれはすべて5度ずつ離れていて、ものすごくピタッと綺麗に調弦できますよね。
隣り合う弦の和音を弾いて調弦します。
ピアノみたいに濁った音色ではないので、和音を弾くと振動が重なるのが分かるんです。
いわゆる完全五度の響きは、超気持ちいい。
雲一つない青空です。

三味線の二上りの場合、一の糸と三の糸はオクターブの関係なので、濁らず綺麗、当然調弦しやすい。
一の糸と二の糸は完全五度なので、これも濁らず合わせやすい。
三味線は、さわりがつきますよね。

本調子も一の糸と三の糸はオクターブの関係なので、濁らず綺麗、当然調弦しやすい。
今度は二の糸と三の糸が完全五度で、濁らず合わせやすい。

で、三下りは?
一の糸と二の糸の間は4度、二の糸と三の糸の間も4度。
合わせにくい〜
いつも、二上りにしてから、一の糸を一音下げて調弦します。

4度って、物理的には完全協和音ですよね?
ふつう、楽典には協和音に分類されているし…
でも、よく対位法的には、あるいは音楽的には不協和音と説明されてますよね?

そもそも協和音って「溶け合う」感じとか「安定」した感じだと言いますよね?
もっとも、感覚なんて、人それぞれだからアテにはならんのでしょうが。
私は、4度ってピタッと溶ける感じがしないので、ダイレクトに4度を正確にさがせないよう〜
もちろん、有る程度なら、ダイレクトに4度に調弦できますが、誤差が出ちゃいます。
だって「蛍の光」の出だしだよね?
ほたぁるの…って歌えば、「ほ」と「たぁるの」の間は4度だからね。
何十年も毎年歌ってるもんねぇ。

ところで、ピアノで2度の和音を弾くと、不協和音なのでめっちゃ気分悪いけど、何で、三味線で弾くと綺麗に聞こえるの?
え?
そう思ってるの私だけじゃないよね?
二上り調弦の三味線で、師匠が一の糸四のツボと二の糸の開放弦を同時に弾くと、あまりの美しさに、私はめっちゃテンションが上がります。
例えが適切かどうか分からないけど、美人な妖怪のお姉さんの吐息みたい。
美人なんだけど、とっても危うい感じで、艶かしいんですが…
ちなみに自分で弾いても上手く響かないんだけど、何でだろう?

三味線て、いわゆる不協和音がどえりゃ〜(名古屋訛り)美しいんですわ。
だから、三下りなんていう調弦もありなんでしょうね。

皆様は、4度をどうやって調弦しているのでしょうか?
4度にどんな感覚を抱くものなんでしょうか?
私の中では、4度は、別れ、哀愁、季節なら秋、色ならセピア色かな。