下手に弾けるぐらい上手くなりたい

仁王様のように優しいトシミネ先生(私の三弦の先生の仮名です)のレッスンでした。

「ちゃう!!!」
というのがおそらくレッスンで彼が一番使うセリフだと思います。

ある先輩に言わせると、言い方がきついので、やる気なくすそうですが、まぁ、あれぐらい言われないと私は身に付かない(動物と同じですみません)ので、いいけど。

「楽譜にどう書いてある?」と聞くので歌ってみせると、
「合ってんじゃん。でもお前が弾いてるのはこうだよ」とド下手な私の演奏をリプレイしてくださる(^^;

昔、のだめの映画を見に行って、へたくそな「ボレロ」の演奏が流れたとき、一緒に見に行った人が
「上手い人って下手に弾く(演技する)方が難しいんじゃないの?」と私に聞きました。
そんなことないよね?
「私の知ってる先生方は、皆下手なところをデフォルメして見せてくれるけど?」って言ったら、
そーなんだと納得してました。

ちなみに今日弾いた曲は、男女の恋の告白も自由でない封建時代、侍女が伝言を伝えるために、二人の間を行き来するため階段を上っている様子、というのがテーマでして(なんじゃ、こりゃですか?)
通常、侍女(少女)は優雅で軽やかに階段を上らなきゃいけないのに(ついでに言えば、二人の仲を取り持っているというちょっとしたハッピーな気分もある)、私の調子だと、階段でこけて落っこちていくらしい。
出だしは、少女が衣装をふわっと切り返して上り始めるべきところ、まるでロボットがカックンと急に振り返って、だ~あぁぁっと崩れ落ちてゆく…。
あんまり先生のモノマネがおかしかったんで、笑ってしまったら
「笑っている場合じゃない、音響効果的に、お前がそう弾いてるんだ!」
ゴメンナサイ。

どうも私はリズム感なくて…っていうか、中国の曲って弾きにくいよ~
頭で音符の長さの理屈は分かっていて、なおかつ歌えるのに、弾くと脳と手が合わない…ORZ
いや、トシミネ先生が傍で唄ってくれれば、ちゃんと合わせられるんですけどね(^^;
私は脳のメモリ足りないんだろうなぁ。
自分の心で唄う場合、唄う事と手の運動という二つの作業をして、それがシンクロしないといけないんだけど、メモリが二作業分確保できん。
だから、誰かにピッタリ合わせるのは一つの作業だから楽ちん。

そして一生懸命弾いている時よりも、ぼ~っとしていた方が、合ってたりするのはなぜ?
ありていに言えば、ぼ~っとしている時の方が余分な力が抜けているのでしょうね。
あんまり、私ができないんで(音大生はここまで頭弱くないし…)、先生、もう笑うしかないんですけどね。

どうしたら三弦が面白く聴けるのか

昨日の記事「他人さまの時間を頂くにあたって」とそのコメントを受けての続きです。

私が一流の演奏家なら、普通に弾くだけで、聴衆は納得してくれると思うんです。
技術サイコー、表現サイコーですからね。

でも、私には聴かせる腕がない…

先日、トシミネ先生にそう言ってどうしたらいいかと相談したら
「お前、いくらなんでも、そりゃ自信なさ過ぎだろう…」と呆れられました。
でも、実際、トシミネ先生だって若い頃出したCD、「ど下手くそ」って、相当叩かれてたじゃん(^^?
つまり、嫉妬みたいなイチャモンは置いといたとしても、三弦を聴かせるのは難しいっていう側面は絶対にあります。
このCDが不評だったわけ、演奏完成度、コンセプト不明、他楽器との録音のバランスの悪さが挙げられます。
(先生曰く「ものすごく後悔している…大学の雑用忙しくて、仕事の依頼受けた翌日広州に行ってろくに練習せず1日で録音した…言い訳だけどな…」)

実は、私、河南地方の伝統曲で某演奏家の演奏譜を使って、譜面通りにしか弾けないのです。

例えれば、私の腕は、簡単な津軽民謡が数曲弾けるようなもの。
この業界のプロの先生方なら、津軽民謡は全曲、加えて、東北民謡が自由自在に弾けて、たまに、お客様の層見て、映画音楽、童謡まで弾けちゃったりしますよね。

また日本の民謡とかと同じで、伝統曲も譜面があっても演奏家によってもずいぶん印象が違った曲になってしまいます。
だから、素人の方が普通に聴いたら分からないんです。
中国音楽、特に箏か琵琶か三弦やってる人ぐらいしか、曲を知らないので、おもろくないです。
中国人の筝、琵琶専攻者ですら、私が弾いてみせると「え?その曲、三弦でも弾けるんだね」と感心されます。
そもそも、これらの曲は、筝、琵琶、三弦の合奏スタイルをとるか、それぞれの楽器で独奏も可という形態をとっていたにもかかわらず、全国に広まったのは筝と琵琶の譜面で三弦の譜面は伝承されているけど知られていないんです。
正直、筝で弾くと弦が多いので華やかですが、三弦で弾くと、上手くない人が弾くと…(汗)

中国人ですら知らないものを日本人にどう聴いていただくか…
そして、何故、そこまでして聴いてほしいか…
そりゃ、あ~た、自分の死活問題だからです(^^;
私は三弦弾き続けたい、でもそのためには聴いてくれる人が必要、でないと私死んじゃう、というわけなのです。
だから、絶対に説明は要ると思います。
でも、だらだら小難しい解説してもつまらんだろう…というわけで、一人で語っちゃおうかなみたいに思ったのです。

上述のトシミネ先生の演奏のなかで、私の好きなある曲は琵琶、筝、笛、二胡と合奏という形態をとってて、私は最初に聴いた時、何て音色がごちゃごちゃ混ざってて、?な演奏だろうと正直思いました。
でも、何回も聴いていたら、「これ、三弦と二胡だけの方がスッキリしてる!」と思うようになりました。
ユニゾンでも西洋的な合奏でもなくて、似たような旋律で合の手を入れるみたいな感じでイケる筈です。
でも、これやっちゃったら、中国人的にはアウトな演出ですよね。
本来、合奏するなら、筝、琵琶、三弦で行くべきなんだから(^^;
できれば、どなたかに二胡弾いてもらいたいけど、タダで頼める当てはない。
仕方がないので、トシミネ先生のCDを参考にして、MIDI音源でも作ってみるかなぁ。
でも、私のコンピュータは、二胡の音出せない~
本当はトシミネ先生にこれのカラオケCDないかと聴いてみましたが、もう破棄しちゃってるだろうとツレナイお返事。
じゃあ、そのままトシミネ先生のCDで、ごちゃごちゃいろんな音色(三弦も含まれる)をバックに流して弾こうかとも思ったけど、これってクチパクみたいで、嫌だなぁ…

ところで、音楽活動されている人に質問なのですが…
私、大昔に務め先の忘年会とかで弾いた時思ったんですが、伴奏等のバックミュージックをパソコンなどで簡易的に再生した場合、音量小さくて聴こえないんですよね~だから、微妙なズレが生じ始めたりします。
これが他人との合奏ならまだ手先の運動や目線で合わせるべきところを確認できたりしますが、機会相手だと、その場のテンションに関係なく、本当に数秒単位で合ってないといけないわけだけど、音が聞こえなければ合わせづらい。
絶対に本人の方が緊張のあまり心拍数上がって、速くなるに決まっている…
簡単に安く、自分が弾きやすい環境を作るには、どうしたらいいんでしょう?
ちなみに自分の音はといえば、三弦って音がかなり通りますから、自分の音を見失うことはない…
初歩的な質問ですみません~

他人さまの時間を頂くにあたって

五月初め、日本帰国中、仕事を一つ引き受けました。「仕事」とは普通、報酬をいただいてやるもののことを言うと思いますが、私の恩師(中国法、比較法学の研究者)はよく、お金にならない作業でも「お仕事」と言い、「今、どんなお仕事されていますか?」とおっとり聞くような方でした。1931年生まれの人ですから、親しい間柄でも敬語がやたら多くて、弟子に論文指導するときですら「ご進言申し上げますが…」と言う人だったなぁ~

というわけで、引き受けた「お仕事」の案をメモってみます。

70代の方々が集まる茶話会(?)みたいな場で、何か弾いてみない?というお話をいただきました。
ありがたいことに、「やりたいものをやりたいように、やってもいいよ」ということなんです。
そこで、考えました。

私に一体何ができるだろう…

いくら、報酬を頂くわけではないと言っても、こりゃヒドイというものをお見せするわけにはいかないでしょう…
他人さまの時間を頂くわけですからね。

というわけで、三味線と二胡は選択から消えました。
これらの楽器は、タダで、上手い人の演奏を聴くことができます(笑)。
三弦は、私、まだ下手ですが、この先、誰かがタダで弾くことはまずないし、お金出したって、そういう機会がほとんどないので簡単に聴けるものではないんで、これしかないでしょう。
じゃ、何弾く?っていうか、何が弾けるのかという問題。
最近の若い人は、速い西洋曲のアレンジ曲や、超絶技巧が披露できるものばかり弾きますが(弾かされているんですが…)、そういうのは、ギター弾きに弾いてもらえば?って思います。
それと実際、私の腕では、速い曲は弾けません。
中国人演奏家も教育者も、子どもや若者に広めたい一心で、西洋的な現代曲を作曲したり、教えたりする傾向が強いみたい。
私からしてみたら、西洋音楽は西洋楽器にやっていただければいいわけで、何も民族楽器でモーツアルト弾くことないじゃん。
でも私も昔は、中国の曲を何も知らなかったから、日本の唱歌とか片っぱしから弾いてみたりしましたが、それは和楽器の方が合うよね(^^;

私自身、好きなのは中国の民間伝統曲です。
しかし、ここにも落とし穴が…
民間の伝統的な曲というのは、往往にして、技術そのものは難しくないのです。
だから、簡単そうに見えて、実は恐怖の曲でして、音色が綺麗で、リズムの特徴をつかんでいないと、ものすごく単調でツマンナイ曲になっちゃうんですな(汗)
でも、他に弾けないから、とりあえず、そういうもの弾きます。

もっとバラしちゃうと、本当は人前で弾くべきじゃない腕なのですが…(私の音楽科の先輩方だってお金取れる?な腕の人いるもの。そこらへんが二胡みたいに3、4歳からやっているので全体的なレベルがやたら高いという世界じゃない。)
後、10年経って、上手くなっている保証もないし、10年後に人が弾いてよと言ってくれる保証もないので、弾いちゃいます。

上述の通り、素人が伝統曲弾くと、実にツマラナイ。
三弦系の楽器って、猫が弦を引っ掻いただけで音出る楽器なので…ほんと基礎技術がきちんとしてないと、聴衆も容赦なく「ツマンナイ音」って顔に出るからな、ほんと、憐れです。

じゃあ、どうしようかな。
そこで、考えました。
曲を聴かせようと思うから、無理があるんだって。
三弦独奏で、聴衆を納得させられる人って、私が思うには、ほとんどいないんだし、素人が弾くだけで、満足してもらえるはずないじゃない?
古い曲にはそれなりの物語がくっついてます。
じゃあ、最初にその曲の物語を、一人芝居するか、語ってしまえば?
よく、コンサートでは曲の間にMCが入って、お客さんとコミュニケーションをとったり、楽しませてくれます。
私の場合は、語りの間に曲が入ればいいんじゃないかと。
そして、上手く語れなさそうだったら、講義してしまえ…ってこれは文化講座か???
自分にできることするしかないじゃん。

そもそも形式とは、人間が定めたものなので、なければ、自分が創ってしまえばいい。

↑某先生のウケウリです。
邪道ですか?(笑)